記録しているのにミスをする──注意障害の私が気づいた“記録の落とし穴”とその乗り越え方

記録の工夫と実践

1. はじめに

記録しているのに、なぜか同じミスを繰り返してしまう。 TODOリストも作った。メモも残した。それでも「やるべきこと」をすっぽかしてしまう。

一見すると「うっかり」や「不注意」に見えますが、当事者からすればもっと複雑です。

実際、私は注意障害を抱えており、「記録したこと」そのものを忘れるという現象が起きます。

この記事では、記録してもミスが減らない理由と、私が実践してきた工夫についてまとめます。


2. 【現実】記録したこと自体を忘れてしまう──私のケース

記録を「見返さない」から失敗するのではありません。 そもそも、「記録した」という行為そのものを忘れてしまうのです。

結果として、同じことを何度もメモしてしまい、そのたびに内容が微妙に変化していきます。

これは「自覚できていないから変わる」のです。 記録内容の揺れに自分では気づけず、誤差を積み重ねてしまう。

こうした現象は、注意障害の一部として理解されているものです。 「メモしたのに忘れる」というシンプルな言葉では片づけられない、もどかしさがあります。


3. メモが正確にとれない現実──口頭情報と記録のギャップ

さらに深刻なのは、そもそも正確な記録がとれないこと。 特に相手が「口頭」で説明してくる場合が致命的です。

私は相手の話の半分くらいしかメモできません。 手書きは遅くて追いつかず、かといってPCは自由なレイアウトが難しい。

メモをとる途中で、「頭の中にあるフレーズ」と「実際に書いている言葉」が違うという現象もあります。 指摘されて初めて「まったく違うことを書いていた」と気づくのです。

普通の人から見れば「書けば気づくだろう」と思うかもしれません。 しかし、注意障害の当事者にとっては、それができません。 気づけないのです。


4. 流れを重視した記録術──私の“フローチャート型メモ”

こうした問題への対策として、私は「フローチャート形式のメモ」を活用しています。

これは、項目同士を矢印でつなぎながら「全体の流れ」を視覚化する方法です。

このやり方には大きなメリットがあります。

  • 一目で全体がわかる
  • 前後のつながりを記録できる
  • 矛盾が起きにくい

聞き取りミスや記録遅れがあると途切れてしまう弱点はありますが、 「全体の流れを見える形で記録する」点では非常に優れています。


5. 「記録すれば安心」は幻想?──私のケースは逆だった

世の中では「記録すれば安心」「メモしたからもう大丈夫」と言われます。 しかし、私にはそれが当てはまりません。

むしろ、「メモをしたけれど不安」「本当にメモしたかどうか不安」 「もっとメモを取らないと」「どれが本当のメモかわからない」といった、 強い不安感がつきまといます。

記録をしたことで油断するのではなく、 記録に対する不信感が生まれているのです。

これは、「過信」とは逆の方向にある問題です。


6. 私が実践している工夫とその効果

✔ フローで見せる「進行マップ・ワークフロー」

上でも触れたように、私はフローチャート型の記録をしています。 視覚的に流れをつかみやすく、特に複雑な手順には効果的です。

✔ 清書時に「トリガー」を組み込む

メモをPCで清書するとき、 「この作業を始めたらこのメモを開く」といったトリガーを設定しています。

行動と記録をひもづけることで、メモの“使われなさ”を防ぎます。


7. 今後試したい記録の工夫(実践中・検討中)

💡 「自分への問いかけ」を記録に含める

「これは終わった?」「次は何をすべき?」など、 記録の中に“問いかけ”を含めることで、思考が動く可能性があります。

自分の思考の確認プロンプトとして、これは非常に面白そうな方法です。

💡 使わなかった記録を“振り返る”

「このメモ、使わなかったな」と気づいたとき、 その理由を探っていくことで、記録術の改善が見込めそうです。

「内容が悪いのか?」「タイミングが悪かったのか?」「見る場所に問題が?」 といった“反省の起点”として活用できます。


8. おわりに──「記録する力」は“設計する力”

記録とは、単なるメモの話ではありません。

「脳の外に、自分の考え方や注意の仕組みをどう再現するか」

つまり、“自分の脳を外部に設計する行為”です。

記録を通じて、自分のつまずきに気づき、 それに合わせた「使える記録のしかた」を少しずつ試していく。

その積み重ねが、私の生活と仕事を少しずつ支えてくれています。

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