「絶対に元の世界に戻ってやる。」
それが私の最初の思いでした。
けれど、ほんの一瞬で、人生は暗黒の底に沈みました。
「昔の自分」は遠ざかり、今の私は何もできない。そんな日々。
障害受容とは一体何なのか?
私はどんなふうに心が揺れ、どんなふうに立ち上がってきたのか?
この記事では、私自身のリアルな歩みと、障害受容の段階についてお話しします。
同じように迷っている方の、ささやかなヒントになればと思います。
一般的な障害受容の段階モデル
障害を負ったときの心の動きは、クーブラー=ロスの「悲嘆の5段階」によく例えられます。
- 否認(そんなはずはない)
- 怒り(なぜ自分が)
- 取引(こうすれば元に戻るのでは)
- 抑うつ(もうだめだ)
- 受容(これが自分の一部だと認める)
ただし、この段階は一直線に進むわけではなく、行きつ戻りつしながら進んでいくものです。
私自身も、このモデルとは少し異なる、自分なりの歩みがありました。
私の歩み:否認と激しい願い
障害を負ったとき、私の心の中で一番強かったのは、
「絶対に元の世界に戻ってやる」という気持ちでした。
それまで私は理想的な生活を送り、能力を認められ、信頼されて生きてきました。
その世界が、病気によって一瞬で消えてしまったのです。
「絶対に取り戻してやる」「今までやってできないことはなかった」
そう信じて、猛烈に行動を始めました。
しかし、すべてに失敗しました。
なぜ失敗するのか理由がわからず、狂いそうになりながら頑張り続けた結果、「無理だ」と悟りました。
崩れた記憶と暗黒の底
病前に行っていた仕事の続きをしようとしましたが、ほんの些細な刺激で記憶が崩れるのです。
周囲の物音、目を離した瞬間、トランプのピラミッドのように崩れていく記憶。
「真っ暗な井戸の底。出られない。登れない。這い上がれない。」
そんな暗黒の底に落ちました。
「自分が生きる価値はなくなった。」「死んだ方が楽かもしれない。」
そう思い詰める日々が続きました。
小さな光:運転再開への夢
それでも、心の奥底には「運転を再開したい」という目標が残っていました。
これは自分が急性期の病院で語った目標だそうですが、言った記憶はありません。
けれど家族に聞かされて「自分らしい目標だ」と納得しました。
「自由の翼を取り返したい」
運転は私にとって、元の世界に戻る証明の一つでした。
リハビリの道のり
運転再開を目指して、片道90分のリハビリ通院をひたすら続けました。
疲労、頭痛、過呼吸。それでも毎回記録を書き残し、休まず取り組みました。
「早く運転したい!」「自由の翼を取り返したい」
実際に運転再開できた時は本当に嬉しかった。
制限はありましたが、目標に到達できた達成感がありました。
数百メートル走って寝込んだ、それも今では懐かしい思い出です。
障害受容とは、私にとって何か?
私にとって障害を受け入れるとは、自覚し、対策を考え、行動し、試行錯誤することです。
理不尽さにぶつかっても取り乱さず、また考えて試す。
このサイクルを自然に回せるようになった状態が、「障害受容」だと感じています。
今の私の気持ち
今は、完全に受容している、むしろ楽しんでいると言えます。
「ピンチはチャンスだった」。今はそう思えます。
挑戦を楽しむことができる今の自分に自信があります。
障害を負った人が前向きになってはダメなんでしょうか?幸せを望んではダメなんでしょうか?
私は新しい世界に進むために全力を注いでいます。
就労移行支援を通じて自分の武器を明確にできた今、次のステージに進んでいきたいと思っています。
「暗黒の時代はそろそろ終わりそう。」
私は今、そんな気持ちで前を向いています。
まとめ
障害受容は人それぞれの道のりです。
私は、否認、怒り、暗黒の底、さまざまな段階を経て、ようやく「今」を迎えています。
「完全に受容する」とは言っても、心が揺れる日だってまだあります。それでいいのです。
もしあなたが今、苦しい場所にいたとしても、それは決して間違った場所ではありません。
今の自分の場所をそのまま認めて、一歩ずつ進んでいけたら、それがきっと未来につながっていきます。
「暗黒の時代はそろそろ終わりそう。」
私は今、そんな気持ちで前を向いています。
あなたにも、きっとあなたなりの「自由の翼」が待っています。
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あなたへ
もし今、あなたの心の中に「昔の自分に戻りたい」という思いが渦巻いていたとしても、大丈夫です。
そんな気持ちになるのは自然なことです。私もそうでした。
でも今はこう思っています。
「戻る」のではなく、「今の自分なりの新しい世界」を見つけていいのだと。