人に頼るための7つのステップ

学びと気づき
  1. はじめに
  2. 1.まずは「自分の困りごと」を言語化する
    1. 1-1. 感情ログをつける
    2. 1-2. 問いかけワークシートで深掘り
    3. 1-3. 第三者視点のフィードバックを得る
    4. 1-4. 自己評価と他者評価のギャップを認める
    5. 1-5. 頑固さの認知ギャップを埋める
    6. 1-6. 記憶障害を補う仕組みを作る
  3. 2.頼る相手のタイプを深掘りする
    1. 2-1. 相手の強みと弱みをマッピングする
    2. 2-2. 感情サポートと業務サポートを分ける
    3. 2-3. 距離のある相手へのアプローチ
  4. 3.声をかける「タイミング」と「場所」を具体化する
    1. 3-1. ベストタイミングを見極める
    2. 3-2. チャネル別のメリット・デメリット
    3. 3-3. 話の切り出し方:最初に「何の話か」を伝える
    4. 3-3. 応答が非礼・拒否的な場合の対処
  5. 4.具体的にお願いするスキルを磨く
    1. 4-1. PREP法で構成する(+相手メリット・デメリット提示要素)
    2. 4-2. 質問の粒度を調整する. 質問の粒度を調整する. 質問の粒度を調整する
  6. 5.「ありがとう」と「報告」を深める
    1. 5-1. 感謝のフォーマット化
    2. 5-2. 成果を共有する
  7. 6.フィードバックを受け入れる&アクションにつなげる
    1. 6-1. 受け取り姿勢を整える
    2. 6-2. フィードバックループを回す
  8. 7.継続的な信頼関係をつくる仕組み
    1. 7-1. 相互依存のサイクルをデザインする
    2. 7-2. 定期的な感謝・共有イベント
  9. おわりに

はじめに

※本記事は筆者自身の記憶障害や頑固さと向き合う当事者としての体験をもとに執筆しています。専門的なアドバイスではなく、一人の当事者の声の一つとしてお読みください。

「何かがうまくいかないのに、何に困っているのか自分でもわからない──」
そんな状態では、誰にも頼れずに同じところをグルグル回ってしまいます。さらに筆者の場合、記憶障害によって、一度解決したはずの問題や合意事項が定着せず、再度同じ説明を求められることで周囲から「頑固だ」「融通が利かない」と誤解されることがありました。

以下は、筆者の体験ベースのメソッドとして「自分の困りごと」を言語化し、「自分視点」と「周囲視点」のズレを認め、記憶障害への対策を組み込みながら進める7つのステップです。


1.まずは「自分の困りごと」を言語化する

1-1. 感情ログをつける

  • 1日の中で「モヤモヤした」「イライラした」「不安だ」と感じた瞬間を時刻とともにメモ。
  • 「いつ/何をして/どんな気持ちか」を書くだけで、自分の“傾向”が見えてくる。

1-2. 問いかけワークシートで深掘り

  • 「なぜ?」「何が困る?」「どうしたい?」の3セットを繰り返す。
  • 例:
    1. なぜモヤモヤ? → ゴールが不明確だから
    2. なぜ不明確? → 自分の役割が曖昧だから
    3. なぜ曖昧? → 指示/情報が足りないから

1-3. 第三者視点のフィードバックを得る

  • 信頼できる同僚や友人に「最近、私の◯◯なところで困っていそうに見える?」と聞いてみる。
  • 他者からのコメントは、自分では気づけない“停滞ポイント”へのヒントになる。

1-4. 自己評価と他者評価のギャップを認める

  • ズレがあって当然:自分の感じ方と、周りの見え方は違うもの。
  • 認める練習
    1. 他者からの指摘を「そういう見え方があるんだ」と一度受け止める。
    2. 「自分はこう思っているが、周りはこう見ている」という形でメモを並べる。
    3. ギャップの理由を考え、「次に誰に何をどう確認すればいいか」を書き出す。
  • ポイント:頑なに否定せず、小さな「受け入れ」の一歩を踏み出す。

1-5. 頑固さの認知ギャップを埋める

  • 頑固さを自覚する難しさ:自分では「柔軟だ」と思っていても、周囲から「頑固」と評されたら驚くもの。
  • 具体ワーク
    1. 行動事例の収集
      • 過去に自分が「譲れなかった」「意見を変えなかった」場面を書き出す。
      • そのとき誰が何と言い、どう反応したかもメモ。
    2. 他者へのヒアリング
      • 「私が○○の場面で頑固に見えたことは?」と複数人に聞いてみる。
      • 具体的な言葉やエピソードを教えてもらう。
    3. 自己振り返りシート
      • 自分が「なぜ譲れなかったか」を問い直す(価値観/こだわり/不安)。
      • 「次に同じ状況が来たら、どんな条件なら柔軟になれそうか」を書き出す。
  • ポイント:自覚できない頑固さを“見える化”し、小さな変化を積み重ねる。

1-6. 記憶障害を補う仕組みを作る

  • 問題の本質:その場では理解・合意できても、記憶に定着せず、再度同じ説明を求められることで頑固と誤解される。
  • 対策ワーク
    1. 外部メモの活用
      • 手書きノートやデジタルツール(Evernote、OneNoteなど)に合意事項・解決策を時系列で記録。
      • テンプレート化して、見返しやすく整理する。
    2. 定期的な振り返り&確認
      • 毎日/毎週の振り返りタイムをカレンダーに組み込む。
      • 関係者にメールで「先週決めた内容の確認です」と送付し、合意を再確認。
    3. リマインダー設定
      • タスク管理ツールやアラームで重要な期日・合意事項を通知。
  • ポイント:記憶に頼らず、仕組みでフォローすることで誤解を防ぎつつ、自信を持って頼れる土台を作る。

2.頼る相手のタイプを深掘りする

2-1. 相手の強みと弱みをマッピングする

  • 業務スキル: 技術的アドバイスが得意な人/苦手な人
  • コミュニケーション: フランクに話せる人/フォーマルなやり取りが得意な人
  • 時間的余裕: いつも忙しそう/余裕がありそう

ワーク: 身近な3人について「筆者が頼りたいポイント」を整理。

2-2. 感情サポートと業務サポートを分ける

  • 感情面がほしい場面(筆者の実体験): 打ち合わせ前の緊張を話したくなった
  • 業務面がほしい場面: 新しいExcelマクロの書き方を教えてほしい

ワーク: 最近筆者が困った出来事を2つ挙げ、それぞれ「誰にどのサポートを依頼するか」をマトリクスで整理。

2-3. 距離のある相手へのアプローチ

筆者の場合、直属の同僚ではない人に依頼すると、心理的ハードルが数倍に跳ね上がりました。そのような“距離のある相手”に頼るためのポイントは以下の通りです。

  1. 共通のつながりを活用する
    • 直接の紹介者を介して依頼すると、信頼感が高まる。
    • 例: 同じプロジェクトに関わる第三者に「◯◯さんに相談したいのですが、ご紹介いただけますか?」と頼む。
  2. 事前に背景を丁寧に説明する
    • なぜその人でなければならないのか、目的や緊急度を明確に示す。
    • 例: 「以前◯◯のプロジェクトでの知見を拝見し、ぜひご意見を伺いたくご連絡しました。」
  3. 小さな依頼から始める
    • マイクロリクエストとして「5分程度のアドバイス」をお願いし、反応を見ながら徐々にステップアップ。
  4. 非同期チャネルを活用する
    • チャットやメールであらかじめ要件を共有し、相手の都合に合わせた返信を促す。
  5. 感謝をしっかり伝える
    • 距離がある相手ほど「ありがとう」の言葉を具体的に記し、フォローアップを忘れない。

ワーク: 直属以外のメンバーや他部署メンバーに依頼する想定で、上記5つのポイントを使った依頼文の文例を作成。


3.声をかける「タイミング」と「場所」を具体化する

3-1. ベストタイミングを見極める

  • 午前中ミーティング後: 筆者の場合、脳がリセットされている感覚があった
  • ランチ後: リラックスタイムで相談しやすかったと実感

ワーク: 1週間分の相手のスケジュールを観察し、相談可能時間帯を3つ選ぶ(筆者の例を参考に)。

3-2. チャネル別のメリット・デメリット

チャネルメリットデメリット筆者の使い分け例
対面非言語が伝わるタイミング調整が必要複雑な問題の相談に使用
チャット時間を気にせずやり取り意図が伝わりにくい翻訳作業の確認など簡易依頼に使用
メール記録が残る返信まで時間がかかる合意事項の共有に使用

ワーク: 次回の相談内容に応じ、筆者の例を参考にチャネル選定ルールを3つ作成。

3-3. 話の切り出し方:最初に「何の話か」を伝える

突然詳細に入ると相手が混乱し、協力を得にくくなります。特に電話や忙しい相手には以下を意識しましょう。

  1. 冒頭で要件名を伝える
    • 例: 「今お時間よろしいでしょうか?◯◯について確認させてください。」
  2. 短い導入フレーズ
    • 例: 「先ほどの打ち合わせの続きで…」「この後予定外のご相談なのですが…」
  3. 相手の状況確認
    • 例: 「お忙しそうですが、少しお時間いただけますか?」

ワーク: 実際のシーンを想定し、冒頭の一言で要件を伝えるフレーズを5つ作成。


3-3. 応答が非礼・拒否的な場合の対処

経験上、相手が非常に忙しかったり好意的でない場合、非礼や拒否的な反応を受けることがあります。以下の対処法を活用しましょう。

  1. 冷静さを保つ
    • 相手の感情に引きずられず、礼儀正しく対応。
  2. フォローアップの機会を設ける
    • 時間を空けて再度連絡。(例:「お忙しいところ失礼しました。改めてご都合の良いときにご相談させてください。」)
  3. 代替ルートを検討
    • 別のチャネルや共通の知人経由で再アプローチ。
  4. 記録を残す
    • 非礼な対応のやり取りは記録し、エスカレーションや上司報告の材料に。
  5. 自己防衛
    • 罵倒やハラスメントと判断した場合は無理に関わらず距離を置く。

ワーク: 過去に非礼な対応をされた経験を振り返り、上記5つの対処法を適用したショートロールプレイを作成。



4.具体的にお願いするスキルを磨く

4-1. PREP法で構成する(+相手メリット・デメリット提示要素)

  • Point: 要点を明確に提示
  • Reason: なぜ必要かを説明
  • Benefit: 相手にもたらすメリットを示す(相手の視点で「どう得するか」を伝える)
  • Cost: 依頼を受けた場合のデメリットや負担を予め提示し、誠実さを示す
  • Example: 過去の事例やデータを示す
  • Point: 結論を再提示

ワーク: 筆者が実際に頼んだ依頼をPREP+Benefit+Cost要素で書き直してみる。

4-2. 質問の粒度を調整する. 質問の粒度を調整する. 質問の粒度を調整する

  • マイクロリクエスト: 単一ステップの依頼
  • マクロリクエスト: 全体プロセスのサポート依頼

ワーク: 筆者の課題をマイクロ/マクロに分解し、文例を作成。


5.「ありがとう」と「報告」を深める

5-1. 感謝のフォーマット化

  • 言葉+理由+次の行動で構成

例文(筆者体験):

「先日はVBAのデバッグを手伝ってくださり、ありがとうございました。おかげでバグが解消し、プロジェクトが予定通り進みました。今後はいただいたコードを参考に更に機能を拡張します。」

5-2. 成果を共有する

  • 短期報告: 作業直後に1行送る
  • 中期報告: 1週間後に成果や改善点をまとめる

ワーク: 過去1ヶ月のサポート経験から報告タイミングと内容を3パターン作成。


6.フィードバックを受け入れる&アクションにつなげる

6-1. 受け取り姿勢を整える

  • 事前確認: 「フィードバック歓迎です」と明示
  • 傾聴メモ: 箇条書きで記録

6-2. フィードバックループを回す

  • 実践プラン: いただいた指摘で即時改善計画作成
  • 再確認: 1ヶ月後にフォローアップを依頼

ワーク: 最近受けた指摘を3つ挙げ、改善プランと再確認時期を設定。


7.継続的な信頼関係をつくる仕組み

7-1. 相互依存のサイクルをデザインする

  • 自分からのサポート: まず相手のタスクを1つ手伝う(筆者実例)
  • 返礼の期待値: お互いの「お返しルール」を事前に共有

7-2. 定期的な感謝・共有イベント

  • 月一ミニレビュー: チーム内で「ありがとう」を共有(筆者事例)
  • 半年に一度のフィードバック会: 個別振り返りの場を設ける

ワーク: 自身のチームに合わせ、2つの仕組み提案プランを作成。


おわりに

※本記事は筆者の体験ベースによる当事者の声の一つです。
「自分の困りごと」がはっきりしないまま頼ろうとしても、的外れなお願いや躊躇が生まれます。
自己洞察と他者フィードバックで“ズレ”を認め、頑固さを見える化し、記憶障害を補う仕組みを整えたうえで、ステップ2以降もワークを通じて実践を深めることで、何を・誰に・どう頼るべきかが明確になります。
ぜひこの7ステップをひとつずつ取り組み、小さな一歩から助け合いの輪を広げていきましょう。

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