障害を負ってからというもの、私はずっと「昔の自分」を取り戻そうとしていました。
できていたことができなくなる悔しさ。周囲から頼られていた自分とのギャップ。
でもある日、「違う人生をつくる」という選択肢が目の前に現れました。
この記事では、障碍者就労移行支援施設での気づきを通じて、私がどのようにして“別の道”を歩み始めたかを綴ります。
🟦 「もう昔の自分には戻れない」と気づいた瞬間
障害を負ってから、私は何もかもに失敗しました。
以前のようには行動できない現実を、はっきりと自覚しました。
それでも、「何とか取り戻そう」と努力を続けた結果、心身に限界が訪れました。
二次障害。つまり、頑張りすぎてさらに悪化する――そんな苦しい状態になってしまったのです。
「まだ働くのは早い」という判断のもと、就労移行支援施設に通うことになりました。
最初は戸惑いもありましたが、ある日、職員の方からこう言われました。
「あなたの強みは〇〇です。頑張るべき点は、そこではないですよ。」
この言葉は、根拠ある観察と共に、対面で丁寧に伝えられました。
私はそのとき初めて、頭でなく“心から”納得したのです。
そしてようやく、「もう昔の自分を探すのはやめよう」と思うことができました。
🟦 昔の私は、何もかも思い通りだった
思えば、あの頃の私は万能感に包まれていました。
発想力が豊かで、自分のアイデアを形にするスキルもあり、周囲には「教えてほしい」と言われる存在。
人から紹介され、信頼される立場でした。
だからこそ、失ったことへの喪失感は深く、「あの頃の自分に戻りたい」という執着も強かったのです。
🟦 通所支援で芽生えた、新しい視点
施設に通い始めてしばらくすると、少しずつ自分の中に変化が起こりました。
最初に変わったのは「考え方」です。
「幾らかの武器は失ったけれど、眠っていた武器を掘り起こせばいい」
「障害を負ったことで、今まで見えなかった世界が見えるようになった」
私は、自分の“別の側面”に目を向け始めました。
🟦 「違う強みがある」と思えた瞬間
通所の日々の中で、自分のアイデアが採用され、周囲に感謝された経験がありました。
それは、自分を少しずつ信じ直すきっかけとなりました。
「まだできる」ではなく、「違う強みがある」――。
この言葉は、私にとって小さくて大きな希望でした。
🟦 かつての自分へ、今の私が伝えたい言葉
今、もしもあの頃の自分に声をかけられるなら、私はこう言いたい。
「今、頼りにしていた武器が壊れてしまって、必死に直そうとしているけれど、
あなたには、別の武器がたくさんあるよ。両手に装備しているよ。よく見てごらん。」
過去の自分に対して優しく、でも確かに伝えたいメッセージです。
🟦 でも、現実はそんなにきれいに終わらない
……ただし、ここで話は終わりません。
現実は、物語のように綺麗には収まりません。
「新しい武器」は見つけました。
けれど、それがかつてのような「自信」になるには、まだ時間がかかります。
昔の武器には、実績という“裏付け”がありました。
今の武器には、それがまだない。これから私は、その実績を一つひとつ積み上げていく必要があるのです。
🟦 結び(まとめ)
障碍者就労移行支援施設は、「昔の自分に戻る場所」ではありませんでした。
ここは、“新しい自分で生きていく力”を育てる場所だったのです。
今の私は、かつての自分と同じ道を歩いてはいません。
でも、それは劣った人生ではなく、「違う人生を自分でつくっていく」という選択です。
これからもきっと迷うし、揺れることもあるでしょう。
それでも私は、もう“昔の自分”を追いかけません。
新しい武器を信じて、一歩ずつ、違う人生を歩いていこうと思っています。